海外のカーボンクレジット動向でそもそものスタートは1997年の京都議定書と2015年のパリ協定である。ここで国際的なCO2排出目標を定めた国際協定が採択された。
各国でこの目標に向けた独自ルールを作って運用している。
カーボンクレジットとカーボンオフセット
海外でのカーボンクレジットのルールは日本のJ-クレジットとは若干異なる。カーボンクレジットとは排出量の許可証のようなもので、これを政府から買うことにより、1トンあたりCO2排出量を生成する許可を得られる。また過剰にこのクレジットを持つ企業は他社に売ることもできる。
一方若干名前が異なるがカーボンオフセットというものもあり、これは政府関係なく企業間でCO2を吸収する取り組みをしたものが他社にオフセット分を売ることができる。
通常これらは同じ意味合いで用いられることもあるため、オフセットクレジットと呼ばれることも多い。
キャップアンドトレード
通常、カナダ、EU,イギリス、中国、ニュージーランド、日本、韓国でそれぞれ何らかの形で反映されているこのキャップトレードという仕組みはつまり、排出目標のキャップの子度を指す。
各企業に政府がある一定の炭素排出上限を設け、その上限を超えた企業は超えなかった企業からカーボンオフセットを買い、基準以内の排出目標を目指す。
この上限に罰金が設けられているかいないかで大きく義務度合は異なる。
2つのカーボン市場
キャップアンドトレードスキームは各国や地域の政府で採用されているかが異なるがもし採用されている地域の場合は何かしらの上限が存在し、その上限に達しないようにカーボンクレジットを買わなければならない。これをコンプライアンス又はレギュレタリーマーケット(規制市場)という。
一方購入の義務付けがない市場をボランタリーマーケット(任意市場)という。この市場の企業は、環境に配慮して、そうしたいという自発的な理由で二酸化炭素排出量を相殺する取り組みを行っている。
よく企業の決算発表なんかで「〇年までにカーボンニュートラルを実現する」という発言が社長から出るがあれがそうである。
環境に配慮している企業というアピールをしたいのだ。
規制市場の規模
カーボンクレジットの規制市場の規模は巨大で総市場規模は2,610億ドルといわれています。日本円で約26兆円ですね。
とりわけヨーロッパでは企業が他の企業から買えるようにETSという排出量取引システムが存在する。これらは先物商品として扱われており、将来のカーボンクレジットを購入することができる。1tあたりのCO2を見てみると73.87ユーロ=10,752円(2022年11月23日時点)である。
アメリカカリフォルニアではキャップアンドトレードプログラムを実施している。California Carbon Allowance (CCA)プログラムと呼ばれており、CCAクレジットを購入することによりキャップの上限到達を防げる。1tあたりCO2の価格は28.99ドル=4,084円(2022年11月23日時点)となっている。
ボランタリーマーケットの規模
一方規制されていない市場の方は規制市場よりも取引高はもちろん少ないが今後数年間ではるかに大きくなると予想されている。こちらは企業や個人が自由に買うことができる。
積極的に排出量を削減しようとしているAppleやStripe、Shellなどはこちらのマーケットで売買を行っており、先日もアップルとゴールドマンがカーボンクレジットファンドを作ったニュースで話題になった。
それぞれ航空機業界専用のオフセットと農業や林業を基にしたオフセットが存在するがどちらも3~5ドルつまり約560円程である。やはり、規制がなされていない市場は価格が上がりにくい現状が見られる。
テスラの収益源
テスラの財務諸表で大きな収益源となっているのが規制クレジットの売買です。
カリフォルニアをはじめアメリカの全13州で採用されている制度で、地球環境改善を目指し、各自動車会社に一定数のZEVを製造することを課しています。
ZEVとはZero Emission Vehiclesのことであり、炭素排出ゼロの自動車を言います。
フォードなんかに今から全部電気自動車にしろと言われてもいきなりは無理がありますよね。
そこで彼らはどうするかというとテスラなんかからこのクレジットを購入します。すると炭素排出制限の枠をもらえることになるのです。
2020年テスラの営業利益66億3000万ドルのうち15億8000万ドルつまり、23%がこのカーボンクレジットの売買によって収益をあげています。
アメリカ、ヨーロッパの市場を見ると今後カーボンクレジットの市場がどんどん広がっていくことがわかります。
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